居心地の良かったJUNさん宅を出発すると、すぐにワシントン州へ入る
コーヒーの銘柄で有名な美しい山、マウント・レーニアを右手に眺めながらさらに北へ
この地域の雨は冬の代名詞
シトシト降り続ける雨のなか、シアトルの街へ
ダウンタウンに着き、ウォーターフロントを中心に散策する
シアトルの街もポートランドに似て、古い街並が多い
ただ、ポートランドよりも近代的な建物や海沿いの賑やかな観光地が印象的だった
Seattle Market |
あたりを散策したあとJUNさんに勧めてもらったクラムチャウダーの専門店「Pike Place Chowder」に行ってみる
さすがに有名店
多くの受賞を讃えるメダルが飾られた店内には行列が続いていたが、並ぶ価値はあった
濃厚なチーズの香りが立ち込めるクリーミーなスープは、これまでのどのクラムチャウダーよりも胃を満たしてくれる
太平洋沿岸の街らしく、地元で採れたアサリは風味豊かで食べ応え充分
間違いなくアメリカで食べた食事の中でイチバン満足した食だった
Pike Place Chowder |
その後地元で採れたサーモンやカニが並ぶ魚市場を眺め、シアトルの名物スターバックス1号店へ
ここからスターバックスは世界に広まった
コーヒー文化が栄えるシアトルの街だけでなく、世界のコーヒー文化を牽引してきた企業の象徴だ
First Starbucks Store |
シアトルで冷たい雨が降っているということは、山では雪が降っている
マウントフッドのローカルが待ちわびていた雪だ
早めに街を出て、マウントベーカーの山麓へ向かう
いつしか雨が小雪に変わっていた
走行距離437km
17日間累計走行距離7507km
【2/27 SAT】
ワシントン州の山並みは、その降水量の多さから温帯雨林が生い茂るエリアとしても有名
ホテルをチェックアウトしてしばらく走ると、雨で潤った苔に覆われた国立公園に入る
Baker Forest National Park |
ベーカーの豊かな温帯雨林 |
そして温帯雨林の先に突然切り立った白い山が現れる
そこは、ここ近年ライダーが夢中になっているバンクドスラロームの総本山マウント・ベーカー
温帯雨林ごしにスキーエリアが見えると、その迫力に目を奪われる
針葉樹が生い茂った斜面は壁のように切り立ち、本当にスキーエリアなのか疑わしいほどだった
準備を済ませ、その斜面にアクセスすべくリフトに乗る
するとスキーエリアにとどまらず、周りの目の届く限りのあらゆる山の斜面にバックカントリースキーのトラックが刻まれているのに気づいた
さすがにK2やbcaが生まれた土地だけあって、フリーライドなスキーやスノーボードが盛んなのだ
信じられないことに、シュートが続く崖にもトラックが刻まれており、この土地のライダーのポテンシャルに驚く
トラックが数多く刻まれるMt.ベーカー
ちなみにここではスキーエリアから外に出ることは、日本のように禁止されていない
自由にバックカントリーエリアへアプローチできる
その代わりエリアの内外を問わず、怪我や遭難などのトラブルが発生した場合は、全て各自の責任となる
僕はこの考えが好きだ
他人を雪崩トラブルに巻き込むのは良くないので、さすがにどこでも滑っていいとは言わないが、そもそもスキーやスノーボードは自分の責任でやるもの
エリア内だろうと、自分のトラブルをスキー場の責任と転化するのは筋が違うと思っていた
トラブルを防ぐ装備を自分で用意し、知識を学び、リスクは自分でコントロールするべきだ
これが北米では常識にあたる
そんなことを考えていると、ちょうど目の前をバックパックを背負った二人組がバックカントリーエリアにアクセスしていった
ルートがあるのだろうと予想しつつも、様子を見るに留めた
こういう状況で他のライダーに無謀に着いて行くことも、僕はあまりよしと思わない
この人が本当にルートを知っていて、ちゃんと帰ってこれるのか?
この人の滑る斜面は、自分のレベルで対応できるのか?
全てが未知数だからである
特に、海外のスキー場の場合は、岩で切り立った崖が急に現れ、そのまま後戻りできないなんてことも多々あり得るので、なおさら気をつけたい
ウォーミングアップを兼ねて何本か慎重にルートをチェックしながら滑ったあと、到着時に見かけた斜面とその脇の沢を滑った
やはり下が見えないほどの急斜面は特別だ
日本のゲレンデではなかなか味わえないスリルがあるし、独自のテクニックも必要となる
こういう急斜面は日本にいてはごく一部のバックカントリーエリアでしか鍛えられないが、海外のスキーエリアでは比較的簡単にアクセスできてしまう
日常的に急な長い斜面を滑っているので、海外の滑り手はブッ飛んだ滑りができるのだろう
北米のスキー場に来た喜びを再確認し、急斜面の感覚をようやく思い出すと同時に、そんな斜面ばかりを滑りまくった足はガクガクになってしまい、自分のトレーニング不足が改めて露呈した
なんとも情けない。。。
それでもせっかくなので最後にバンクドスラロームの大会で実際に使われたバンクラインを数本滑る
バンクの入り口に立つと、そのラインに驚いた
うねりながら切り立っているナチュラルパイプにバンクがねじ込まれている
しかもボトムは狭く、アールはクイック
壁に登ってバンクをクリアするとすぐに次の壁が迫る
その壁に対応しながら、またネジれたバンクでカービングして次につなげる
これは日本のバンクとは違い、本当に楽しかった
日本のバンクもこのくらいテクニカルに作った方がきっと盛り上がる
あるタイミングで僕と同じペースでこのバンクを回していたローカルと同じリフトになった
彼は昨年日本の大会で優勝し、日本を代表してここのバンクドスラロームに参戦した高井隆司くんのことを知っていて話が盛り上がった
みんなスキー・スノーボードをそれぞれのスタイルで、だがひとつ上の次元で楽しんでいる
下りトレーニングが足りない僕には、この山は2〜3時間で充分だったが、多くのことを勉強させてもらった
その後、山麓から北上を続け、ついにカナダ国境にたどり着いた
かつて陸路でアメリカーカナダ間を行き来した際は、アメリカ入国のみが厳しかった覚えがある
なので、すぐ入国できると思っていた
ところが、今回はどうも事情が違う
カナダ入国側の税関の行列が一向に進まないのだ
主要道路ならまだしも、名もない国境にも関わらず車列に並んでから税関のゲートまで1時間程も待たされた
カナダ国境 |
ようやく僕たちの番になったが、驚くほどの質問責め
何をしにカナダへ行くのか?
なぜここの国境を選んだのか?
いつ出国するのか?
なぜアメリカにいたのか?
なぜカリフォルニアから車で移動しているのか?
なぜスキーを積んでいるのか?
なぜスキーをしているのか?
などなど・・・
答えを持っていようなことも質問される
哲学の話をしているのか????
とさえ思ってしまった
矢継ぎ早に飛んできた質問を何とか交わし、ようやく質疑が終わったかと思ったらなんとオフィスに行くよう指示を受ける
僕たちだけ?と聞き返しても、監査官は黙ってうなづくだけ
しぶしぶ車を停め、パスポートを持ってオフィスに入る
すると、ヒンドゥー系と思われる親子がオフィス内にいた
なるほど、アメリカ、カナダ、どちらの国民でもないと別室に呼ばれているらしい
ところがオフィス内でも聞いてどうするんだ?というような似た内容の質問が続いた
しばらくおとなしく答え続けていると、一旦離れるよう命じられ、周りの数人で急遽会議が始まる
話し合いが必要な事情なんてあるのか?
入国に際して監査官が話し合うことなんて初めてだ
不安になっていると再度呼び出され、難しい顔で問われる
最後にひとつ質問だ どういう手段で日本まで帰るの?
。。。ん!?どういう手段で?? え?飛行機だけど。。。??え!?
と戸惑っていると、
なんだ、泳いで帰らないのか〜! ハッハッハ!! ウェルカム・トゥ・カナダ!!
と急に笑い出し、入国スタンプを勢い良く押す
おい!ギャグだったのか!?
わかりづらいわ!勘弁してくれ!
っていうかこんなとこでギャグ言うと思わないから!
最後に笑えない、いや面白くもない冗談を言われ、それに対し真顔でツッコミを入れ、後味悪くも通過
そうこうして、自分の人生でイチバン長い時間を過ごした外国、カナダへようやく到着
気分が高揚しているのが自分でわかる
表示がマイルからキロメートルに変わり、気持ちが幾分走りやすくなったのもあり、アッと言う間にバンクーバーへ辿り着いた
懐かしい景色を妻に案内しながらダウンタウンのホテルへチェックイン
かつて住んだ街は勝手がわかっているだけに気楽だ
ここで、ありがたいことに僕に師事して海外での自己研鑽を志し、見事に行動に移してバンクーバーに留学中の身であるかわいい後輩ODAをホテルへ招き、一緒に自炊する
彼は初海外にしていきなり長期滞在、そして初ひとり暮らし
見上げた度胸だ
不慣れなことばかりが続いてストレスが溜まっていたのだろう
久々の再会に喜び、話が途切れることはなかった
髪が伸びすぎているのが気になるが、心なしか逞しくなったように見える
とても嬉しい夜となった
ODAとクッキング |
走行距離383km
18日間累計走行距離7890km
【2/28 SUN】
日曜日ということで、真面目に語学学校へ通うODAも今日は休み
入国して日が浅く、またどうやら勉強に追われているのだろう
まだ登下校の寄り道以外あまり出かけていないとのことだったので、車で周辺各地を案内することにした
まずは僕の大好きなSAMURAI SUSHIのサーモン丼と定食をご馳走する
ここは以前からバンクーバーでも指折りの和食屋で、日本人が経営していることから味が本格的で美味しいのだ
その後、グランビル・アイランドというお台場に似たイメージの観光スポット、アウトドアショップ、スキーショップ、大型ショッピングモールと周る
Granvill Island |
最後にウェストバンクーバーにて僕の大好きな夕陽を眺め、1日を気分良く暮らす
West Vancouver Sunset & Rainbow |
走行距離50km
19日間累計走行距離7940km
【2/29 MON】
朝からドライブしてウェストバンクーバーの先、サイプレス・マウンテンへ
2010年バンクーバーオリンピックで、ハーフパイプとフリースタイルスキーの会場がある山だ
ダウンタウンから30分
とんでもない好アクセスながら、針葉樹が生い茂る本格的なスキーエリアとなっている
九十九折の道をしばらく登るため、海沿いの街バンクーバーからすぐ側なのにも関わらず標高は高く、バンクーバー市内が雨でもここのエリアは雪になる
この時も昨夜降雪があったので木々が白く綺麗に色づいている
ダウンタウンでは軽装だったが、スキースロープに到着して車を降りると空気が凛と冷え、息は白く舞い上がった
キュキュと鳴るほど締まった雪を踏みながら急いで準備する
朝イチの出発ではなかったのでノートラックのパウダーは諦めていたが、ちょうどイチバン上のリフトが営業を開始したタイミングでピークに着いたので、運良くノートラックパウダーを味わえた
久しぶりのカナダの雪だ
アメリカより軽く柔らかい
思わず顔もほころぶ
Cypress Mountain の針葉樹 |
ダウンタウンとイングリッシュ・ベイという湾を眺めながら、ツリーランを2時間だけ楽しんで帰った
大都市にいながら瞬時にこのスケールを滑りに行ける場所は、世界でも数少ない
ついさっきまでパウダーを滑っていたのが嘘かのように、近代的なガラス張りの高層ビルと古いレンガの建物が混在するダウンタウンに戻り、かねてより僕のお気に入りのグリークの名店STEPHOへ
バンクーバーは移民が多く、人種も多様
世界各国から集まっている民族が、それぞれ各国の本場料理を振る舞うレストランを出店しており、あらゆる国の本格的な美味しい料理が楽しめる
しかもアメリカよりも物価が安いので、財布に優しい
ここSTEPHOもお手頃な値段ながら、ボリューム満点、言わずとも本格的、そして最高に美味なギリシャ料理を楽しめるのでオススメだ
1人前を2人でシェアしてちょうどいい量なのでさらに格安に感じる
ラムが苦手な妻も、柔らかくてクセがなくなるほど煮込んだここのラム肉と独自のヨーグルト風味のサラダは大変気に入ったようだ
僕も久しぶりのSTEPHOに舌鼓を打つ
Stepho のグリーク |
あらゆる余韻を漂わせ、語学学校の授業を終えたODAを迎えに行く
そして100均のダイソーとヤオハン・チャイナマーケットで破格にて日本の食材を調達し、みんなで日本のカレーを作る
みんなで食べる美味しい夕飯は、レストランの料理とは別の価値がある
最高の晩餐 |
朝はパウダーを頬張る
昼は名店でグリークを頬張る
夜はみんなで日本のカレーを頬張る
近代ガラスと古代レンガの混ざった街並
英国と世界各国の文化
バンクーバーはかくも素敵な街であり
そこで過ごす1日はかくも素敵な時間である
バンクーバーの夜景 |
走行距離50km
20日間累計走行距離7990km
【3/1 TUE】
実はバンクーバーには弁当屋があり、寿司からドンブリまで持ち帰り専門で提供してくれる
かつてよく利用していたが、久々に覗いてみるとまだ営業しており安心した
しかも当時より欧米人で賑わっており、現地の人々に受け入れられている様だ
日本食のヘルシーさはカリフォルニアやカナダではもはや常識
とはいえ異国でフードビジネスをすることは想像を絶する苦労があるはず
かねてより敬意を持っていたが、その方々の尽力のおかげで日本食が世界に広まったのだ
そしてこの味を保ちながらも格安で料理を提供し、人気店へとのし上がることの凄さ
僕には何もできないが、なぜか同じ日本人として誇らしくなった
嬉しくなって寿司の詰め合わせとサバ塩焼き弁当を買う
こんな当たり前の食材でさえ、今は恋しい
寿司弁当最高! |
そして日本文化の結晶弁当を食べながら国境を渡り再びアメリカへ戻る
アラスカへ渡るためだ
アウトレットで装備を買い足して、出発地であるシアトルタコマ空港へ
念願だった「Pike Place Chowder」には間に合わなかったが、それでも人気の店に滑り込み、雨のシアトルダウンタウンを眺めながらクラムチャウダーを楽しむ
クラムチャウダーとサーモングリル |
そして翌朝早くのフライトということもあり、久々の車中泊で仮眠する
やはりバックカントリーギアを含むスキー3セットと全ての荷物を積んだ車内は狭いが、冒険を前に気分は高まる。。。
走行距離250km
21日間累計走行距離8240km
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